駅やショッピングビルといった街なか、電車やバス内、オフィスビルなどで目にするデジタルサイネージ。
朝起きてから通勤、通学、買い物という生活サイクルの中で、意識をしていなくても接します。
今回は、その中でも年代性別問わず、多くの人が日々立ち寄る「スーパーマーケット」という場所にフォーカスし、デジタルサイネージの活用状況や事例などをご紹介します。
■スーパーにおけるデジタルサイネージの目的
スーパーマーケットは、コンビニと並び最も身近な存在です。
とある調査によると、2015年、食品ほか日用品なども取り扱う総合スーパーにおける、10代から60代の利用率は9割を超えていたそうです。
数万ともいわれる商品を扱い、青果・鮮魚・精肉といった生鮮食品を一カ所で手に入れることができる利便性の高さから、生活になくてはならないライフラインといえる存在です。
そんなスーパーでは、生活密着型のデジタルサイネージが活躍しています。
スーパーでデジタルサイネージを利用する目的や、設置することで得られるメリットには、次のようなものがあります。
●広告、販促
店頭や、商品棚、レジ前などに設置し、今日のお買い得情報や、チラシに記載したおすすめ商品の紹介、ポイントカードの案内などのコンテンツを放映ができます。
販促効果やアップセル・クロスセルによる顧客単価の上昇が期待できます。
また、食品メーカーの製品や自社のサービスを広告する目的で利用されています。
●情報提供
天気予報やレシピ、季節にまつわる情報など、暮らしに役立つ情報を来店客に向けて提供することで、顧客満足度アップにつながります。
また大型店舗などでは、フロアマップを表示させ、様々なエリアの場所を把握して移動を促すことも可能です。
●空間演出
例えば、商品情報だけではなく、自然の景色など、美しい映像を流すことで、その空間に特別感や高級感を付加できます。
これにより、店舗の認知度やブランディングの向上、他店との差別化が期待できます。
また、店舗にとっては紙のポスターを張り替えるといった物理的な管理の手間が省けます。
さらに、スーパーは複数店舗を持っている場合が多く、生鮮食品・季節商品を多数取り扱っています。
そこで、デジタルサイネージを導入すれば、一括で即時に放映内容を変更できるという広告の運用における大きなメリットもあります。
スーパーで利用されているデジタルサイネージのタイプ
スーパーで利用されているデジタルサイネージのタイプは、ネットワークにつながったブロードキャスト型が主流です。
以前はUSBメモリを使用したスタンドアロンが大半でしたが、多数の店舗を有する総合スーパーでの導入事例が増え、ネットワーク型も増えてきました。
そのため、表示できる情報の幅と即時性が格段に上がりました。
先述した運用面での利点は、ネットワーク型サイネージの特長により実現するものです。
スーパーでのデジタルサイネージ活用事例
スーパーでは、実際どのようにデジタルサイネージが活用されているのでしょうか。ここからは、実際に足を運んで確認してきたものを含め、いくつか活用事例をご紹介します。
●ひとつの確立したメディア「イオンチャンネル」
スーパーマーケット業界で売上一位を誇るイオンでは、全国197店で「イオンチャンネル」というデジタルサイネージを展開しています。
トータルで約1,400台にものぼる32型ディスプレイは、2週間あたり約1,689万人が接触する、ひとつのメディアといえる規模です。主にレジ前に設置されており、レジ待ちをしている利用客に対して訴求します。
このような広告媒体により外部企業から広告出稿を呼び込むことによって、新たな収益源獲得にもつながるようです。
「広告」と、天気予報や雑学といった「情報」それぞれ15秒毎のコンテンツが交互に放映されています。
動画と静止画を組み合わせた画面構成により、視認性・広告認知が高まるよう工夫されています。
●設置場所が大切「イトーヨーカドーTV」
関東を中心に店舗を展開する総合スーパー・イトーヨーカ堂。
セブン&アイホールディングス傘下であり、スーパー業界では、イオンに続く売上げ第2位の規模となっています。
イオンよりも数は劣るものの、95店舗の食品レジ前にディスプレイが設置されています。
実際の店舗に見に行ってみたところ、ディスプレイの上部には「旬なnewsやお役立ち情報を放送中」と記載されていました。
週間天気予報、レシピ、ネットスーパーのCM、お買い得情報、旬の食材を時節と絡めて紹介するミニコーナー、今日の占い、クレジットカードの案内、BP商品の紹介、総合スーパーならではの衣料品など他フロアの案内などが15秒刻みで次々に表示されていました。
ネットスーパーのCMは、「重い荷物も玄関まで運んでくれる」という内容だったため、まさに重たいカゴを持った買い物客は具体的な検討につながるだろうと感じました。
野菜売り場の、メインの陳列棚にも32型くらいの大きさのデジタルサイネージが設置され、そこでは野菜の生産者や安全性を伝える動画や野菜の基本的な調理法と保存法についての動画が音楽つきで流れていました。
こちらは、小松菜の映像が流れているにも関わらず、実際にディスプレイの下に並んでいるのはトマトでした。
さらに、出口付近には電子マネーを案内するデジタルサイネージが設置され、クレジットカードでチャージすることで、よりポイントが貯まるという案内をしていました。
支払いを済ませた直後の買い物客に訴えかけるものがあるのではないでしょうか。
スーパーの来店客は、入店時、商品選定時、会計時など、買い物のフローごとにその時考えていることが異なります。
その時その時の気持ちに寄り添うような情報はやはり記憶に残りやすいと感じました。
実際にスーパーに設置されているデジタルサイネージを見ることで、コンテンツの内容が消費者に届くためには、
①設置場所や放映するタイミングが大切であること、②伝えたいことを伝えるだけの一方通行でなく、顧客心理・ニーズに寄り添った情報を届けることが重要だと実感しました。
●特定の商品、食品メーカーをプッシュ「いなげや」
いなげやでは、イオンやヨーカドーのような比較的大型のディスプレイはありませんでした。
その代わりに、特定の商品や商品メーカーの品を紹介する7インチ程度の大きさのディスプレイをいくつか見かけました。
そこには中華系調味料のTVCMが流れ、周辺の棚はすべて該当の商品や、同じメーカーの別商品が陳列されていました。
すぐ横で、さらに試食販売をしているため、食べながらもついつい画面に引きつけられました。
こちらは、広告と販促どちらの効果も狙っているのでしょう。
●人気レシピサイトの次なる一手。オリジナルのデジタルサイネージ「cookpad store TV」
近年、SNSを中心に1分ほどの料理動画が人気を集めています。
レシピサイトの老舗「クックパッド」は昨年末、この料理動画配信への本格参入を発表しました。
また、その動画を利用した施策として、スーパーマーケットなどの流通チェーンの販売計画と連動した新サービス「cookpad store TV」をスタート。
クックパッドがオリジナルに開発したデジタルサイネージ端末をスーパーへ提供しています。
食材・商品の調理法や使い方といった料理動画を配信し商品の購買を促進することが狙いとのことです。
とくに30代~40代の女性で、毎日の献立にクックパッドのレシピを参考にする方は多く、圧倒的な認知度を誇ります。
スーパーの店頭にクックパッド発のデジタルサイネージが設置してあれば、自然と見てみたくなることは間違いありません。
まとめ
今回、いくつか実際にスーパーマーケットのデジタルサイネージを探しに行きましたが、
駅やショッピングセンターなどと比べると、デジタルサイネージの普及はまだまだ発展途上という印象です。
デジタルサイネージが活用できそうな店舗や場所がたくさんありそうです。
スーパーを取り巻く環境は年々厳しくなっています。
商品の購入先はコンビニ、ドラッグストア、インターネットと多様化しており、スーパーがなくても生活が成り立ってしまいます。
しかし、野菜やお肉といった生鮮食品と日用品が一カ所で買えるのは、スーパーマーケットならではの強みであり、生活に密着したライフラインとしてこれからもなくてはならない存在です。
デジタルサイネージを上手く活用することで、ライバルとの差別化を図ることができるのではないでしょうか。
デジタルサイネージは、スーパーという場所で、生活の一部に入り込み、「当たり前」の存在になっていく余地があるでしょう。
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