「デジタルサイネージ」とはいったいどのようなものかご存知ですか?
首都圏において鉄道広告が、テレビやインターネットに次いで接触率の高い「マスメディア」であることをご存知ですか?
JR東日本によると、「JR東日本1週間の延べ利用者数」は、なんと約9,400万人にものぼるそうです。
鉄道広告とは、電車の車両や駅に設置されている、ポスターや、中吊り、ステッカーなどを指します。
そのなかでデジタルサイネージはひとつの広告手法として活用され、東京・品川・渋谷・新宿など主要ターミナル駅を中心 に年々増加しています。
今回は、鉄道広告のなかでも、特に駅におけるデジタルサイネージについて注目し、活用事例などをお伝えします。
■駅で広く活用されるデジタルサイネージ
鉄道におけるデジタルサイネージといえば、JR東日本の「トレインチャンネル」をはじめとする電車内に設置されたディスプレイが広く知られていますが、電車と電車を繋ぐ駅でもバリエーション豊かなデジタルサイネージが数多く活躍しています。
先に挙げたJR東日本管内の駅に設置されているデジタルサイネージ「J・ADビジョン」は、2017年3月時点で61駅477面設置されています。
設置されている駅は、山手線・中央線・中央総武線・京浜東北線の東京駅・秋葉原駅・池袋駅・新宿駅・品川駅といった特に利用客の多い駅が中心です。
もちろん、JR東日本だけではありません。JR東海やJR西日本といったJRグループ各社、日本各地の地下鉄や私鉄の駅にも多数のディスプレイがあります。
例えば、東京メトロには柱型のデジタルサイネージだけで17駅517面 、西武は池袋駅だけで72面 、東急は渋谷駅だけで67面 …といった具合です。
都心の駅を乗降していると、意識しなくても複数のデジタルサイネージが目に飛び込んでくるほどに普及しています。
そして、これらのほとんどは広告メディアとして活用されています。
もちろん、駅で活躍するのは広告のためのデジタルサイネージだけではありません。
広告のほかにも、鉄道の運行状況など、駅では利用者に伝えるべき情報は多数あります。
情報提供ツールとしても、デジタルサイネージの活躍は多岐に渡ります。
■駅という場所がデジタルサイネージにもたらすメリット
広告という観点からみると、街の中心である駅というロケーションは、不特定多数の利用者に対してのリーチを得ることができる場所です。
待ち合わせや電車を待つ時間など、一定の「滞留時間」が生まれやすい場所であり、高い視認性も期待できます。
通勤・通学者はほとんど毎日同じ路線・駅を同じ時間帯に利用するため、「移動時間」という日常生活の中でくりかえし訴求することができます。
ザイアンスの法則とも呼ばれる「単純接触効果」のように、ある対象に何度も触れることで警戒心が薄れ、高感度が高まっていくということも起こりえます。
駅には商業施設も多いため、店舗に近い場所で広告を展開することで、直接購買行動に促すことができます。
駅という場所はまさに、デジタルサイネージにうってつけの場所といえるでしょう。
また、デジタルサイネージというメディアの特性上、時間帯により変化していく利用者層に合わせて表示する内容を変更することができるため、より効果が期待できます。
通勤時間帯はサラリーマン向けの広告を掲載、日中は主婦や高齢者向けの広告を掲載するなど、広告主にとっても媒体社にとってもコストパフォーマンスが高くなります。
また、ひとくちに駅といっても、そのなかにはさらに複数のロケーションがあります。
改札前・コンコース・プラットホームなど、駅のなかでも場所によって、人の流れや滞留時間の有無などが異なります。
これらの細かなロケーションに合わせて情報を出し分けることで、駅の利用者に適切なタイミングで情報を伝えることができます。
■駅のデジタルサイネージの用途別事例
ここでは、駅に設置されているデジタルサイネージの事例を用途別にお伝えします。
【広告】
駅で見かけるデジタルサイネージは場所もサイズもさまざまです。その多くが広告用に設置されているものです。
そのなかでも最もよく目にするのは、コンコースなどの柱にぐるりと4面設置されている60~70インチ程度のディスプレイではないでしょうか。
既存の柱を活用して設置されているこのタイプのサイネージは、行き交う人々の自然な目線上にあるため、視認性が抜群です。
また、一定の間隔で同じように設置されており、歩行中でも繰り返し見ることでしっかりと内容を把握することができます。
品川駅の中央改札口から新幹線のりばや、港南口へと延びる大きな自由通路の両側頭上には、70インチのディスプレイが44面ずらりと並んでいます。
広々とした通路に同じ画面が連なるさまは空間としてインパクトがあり、無意識にディスプレイに目が向きます。
東京駅には、丸の内側の南北ドーム内に横に長い大型マルチビジョンがそれぞれ4面ずつ設置されています。
巨大な東京駅のなかでも、最も東京駅らしい華やかなホールに設置してある特別感のあるデジタルサイネージです。
同じく東京駅には、地下へ降りる階段の正面に、284インチの大型LEDディスプレイが設置されています。
改札内やホームでも多くのデジタルサイネージを見つけることができます。
恵比寿駅では、山手線外回りの線路脇の壁面に、大型のLEDビジョンが設置されています。 電車を待つ人に対して正対する位置にあるため、メッセージ性の高い動画広告にも向いています。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて設置が急がれているホームドアにも、デジタルサイネージが登場しています。
ディスプレイ内だけに留まらず、その周囲に装飾などの演出を施すことで、よりテーマ性の高い広告を打ち出す例もあるなど、駅のデジタルサイネージは行き交う人々の目線を確保するために試行錯誤がなされています。
【鉄道に関する情報のインフォメーション】
駅では、情報提供の場面でもデジタルサイネージが大いに活用されています。
出発時刻や行先、出発ホームなどが表示される発車案内もデジタルサイネージ化が進んでいます。
画面が明るく、フルカラーで表現の幅が広いため、視認性がかなり良くなっています。
現在時刻や停車駅などを同時に表示するなど、一度に多くの情報が記載できることや、現在の電車の位置や、遅延の有無、特急の空席状況など、刻々と変化する状況をリアルタイムで更新できるのはデジタルサイネージならではのメリットといえます。
JR東日本の主要駅の改札付近には「異常時案内用ディスプレイ」が設置されています。
大型のディスプレイに路線図が表示され、遅延や運転の見合わせなどの最新情報がひと目で分かるようになっており、問題のある路線が色分けで表示されます。
情報はリアルタイムで更新され、他の鉄道会社への振替案内を知ることができます。
急いでいる乗客にとって、わざわざ駅員をつかまえて状況を聞く手間が省け非常にメリットがあります。
駅員にとっても、駅内アナウンスや乗客への個別対応の負担軽減につながっているのではないでしょうか。
駅ではインバウンド対策としても、デジタルサイネージが活用されています。
東京駅や秋葉原駅といった、訪日外国人が多く利用する駅には、「Route Finder(ルートファインダー)」 という乗換案内端末が設置されています。
タッチパネル式のディスプレイで、日本語のほかに英語・中国語・韓国語など多言語に対応、目的地までの最短ルートや最安ルート、料金や時刻を調べることができます。
乗換情報だけでなく、日本全国の観光情報を調べることができます。情報はプリントアウト可能という点が、日本のおもてなし力の高さを物語っています。
こちらの端末は意外にも日本人の利用者が多いとのこと。
世界でも有数の複雑さを誇る首都圏の鉄道網は、国内の観光客にとっても助かる存在のようです。
そして、前述の「異常時案内用ディスプレイ」と同様、駅員にとっても心強い存在なのではないでしょうか。
まとめ
今回は、主に首都圏の主要駅の状況についてお伝えしましたが、大阪など地方の大都市の駅でも多くのデジタルサイネージが活躍している状況は似ています。
九州の玄関口・福岡の博多駅ではこの春日本初となる有機ELディスプレイの大型デジタルサイネージを導入するそうです。
デジタルサイネージが単に広告や情報提供のための役割にとどまらず、街の価値向上をも期待されている存在であることが伺えます。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、駅ではより多彩なデジタルサイネージを楽しむことができるようになるでしょう。
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