デジタルサイネージの使用場面として、これまで企業の売上向上のための販売促進や海外からのインバウンドに備えた多言語対応を中心にご紹介してきました。
これらは導入するうえで分かりやすいメリットとなりますが、ディスプレイ広告の役割はそれだけにはとどまりません。
先日の記事で、デジタルサイネージ(電子看板)が従来の看板と異なる機能として、①動画の表示②リアルタイム配信③ユーザーとの対話④スマホと連携した伝達を取り上げました。
一般消費者やメディアなども含めた周囲との関係をつくるコミュニケーション活動を意味するPR(Public Relations)にも影響していきます。
タッチパネル型のインフォメーションボードを活用しながらさまざまな利用法を考えることが、組織の長期的なイメージやブランド形成にも繋がるかもしれません。
今回は社会インフラ・社内の設備について考えてみましょう。
インフラ整備は企業にもブランディング・リピーター獲得などメリットが!
我々が何気なく使うインフラストラクチャー(infrastructure)とは、産業や生活の基盤として整備される施設を指します。
鉄道、水道、道路、通信網、エネルギーなどの産業基盤になるものや経済活動に必須である金融関係の取引所や中央銀行の他、生活基盤になるものとして学校、公園、病院、駅周辺や街の設備なども含まれています。
社会インフラと呼ばれる場合、これらのうち学校等の日常生活に不可欠なものを呼びます。
社会インフラの役割としては、憲法で定められる健康で文化的な最低限度の生活を保障することはもちろんのこと、多くの人々がより便利に利用できるようになることが求められます。
これは国や地方自治体などの公共団体が整備するべきだと思われがちですが、広義で「社会全体の暮らしを豊かにする」ことを考えてください。
民間企業であっても、自社のサービスの周辺環境を整えることでユーザーの満足度を向上させるという点で、同様に向き合っていくべきことではないでしょうか。
これは社会貢献活動という面だけでなく、自社の存続に関しても重要なのです。
「こんなこといいな、できたらいいな♪」を社内外の環境整備で~一見遠回りでも長期的ベネフィットに~
では、自社サービスの設備とはどのようなものがあるのか、どのような改善の余地があるのかを見ていきましょう。
いちばん身近なのは、オフィスの電気・ガス・通信・PCネットワークなどの社内インフラです。
供給体制の確保のためのスマートエネルギーや情報管理、インターネット関係でのセキュリティということは行われていると思います。
しかし、社内の働く環境を良いものにするという観点で考えると、その他に社員の交流スペースをつくる・社内の情報共有や最新ニュース・占い等のコンテンツを発信する場を整えることなども挙げられます。
オフィスのレイアウトをおしゃれな雰囲気に変えることや、新しい設備を取り入れて利用するといったことも該当します。
社員の働くモチベーションが変化することで日々の個人やチームのパフォーマンスに影響することも考えられます。
対外向けのものとしては、自社の製品やサービスをより有意義に使ってもらうための投資です。
飲食店ならば店員を呼ばなくても注文できるようにタブレットを設置することや、美容室で待ち時間に読んでもらう雑誌を用意しておくことなども該当します。
一見、「売上に直結しないからお金をかけても無駄」と思われるかもしれませんが、お客様が一旦自社を選んだ後に「もう来ない」と思われるか「また来よう」と思われるかということは、長い期間で考えた収益に大きく影響します。
そのような設備の有無が自社のブランディングにも影響するのです。
具体的な施策やその効果は以下の例をご覧ください。
こんなところが便利に!インフラ整備でのデジタルサイネージ利用事例
ここまで、日々の暮らしやサービスの利便性向上について述べてきました。
デジタルサイネージの利用に関しては、1980年ごろにアメリカでファッションショーの様子を小売店にあるテレビで映し出されてから、食品チェーンや空港、災害対策やイベント利用など様々な場面でインフラとして用いられています。
ラスベガスなどで大規模な設置が行われ、現在もDSE(Degital Signage Expo)という産業の発展に寄与したソリューション事例を紹介する展示会が毎年行われています。
それでは、社会インフラ・社内の設備投資として活用される方法を見ていきましょう。
1.駐車場待合室での情報案内板
某大型高層ビルの駐車場地下にある出庫待ちのスペースでは、壁にディスプレイを設置させています。
左記の画像のように、ブロードキャスト型(タッチパネルでなく駅付近の大型テレビのように大勢に向けて放映するもの)で広範囲の人々の目に見える位置づけとなっています。
大規模な機械式立体駐車場では、どこに空き駐車スペースがあるのかの空き状況・全体の構図などをリアルタイムで発信しています。
これにより、どこが空いているのかを車で探し回る必要はなくなり、駐車場を利用する方の満足度の大きな向上に繋がっています。
直接的な影響の他に、リアルタイムでの天気予報やニュースの表示、世界遺産の動画を放映することなどで待ち時間のストレスがなくなる効果もあります。
「お客様が立体駐車場の近くで暇そうにしている」という現状に対し、時事ネタや明日の天気がどうなっているかのような情報が得られることでイライラの解消に繋がったようです。
「駐車場を出る前に天気情報などを確認することで駐車場利用時間が少し長くなる→顧客単価が上昇」ということも考えられますが、それ以上に「この駐車場をまた使いたくなるような設備となっている」ことによるリピート顧客増加がメリットでしょう。
ビル自体のブランディングに加え、長期的な収益向上にも繋がることが大きな利点です。
天気予報やニュースに限らず、何をメインの情報以外に流すのかということもカスタマイズ出来るので、自社のサービスにおけるデジタルサイネージの使いどころと組み合わせて考えてみてはいかがでしょうか。
2.ショースペースのラウンジ内総合案内板
マンションディベロッパーが所有物件のワンフロアの公開や新築企画を紹介するためのラウンジなどで、60インチ程の大型ディスプレイや、iPadで物件情報を検索できる端末を設置しています。
ラウンジで対応をするコンシェルジュが常駐するスペースであっても、お客様の数が多くても待ち時間の間に情報検索ができることや、話しかけられずに自分で調べたいというニーズを満たすことができます。
新築分譲マンションや新築賃貸マンション、中古マンション、注文住宅モデルハウス展示場などの様々な商品を扱っていても、それらが特定エリアのどの位置にあるのかを一元的に地図で表示することができます。
タッチパネル式ならば、検索方法もユーザーの好みによって調整できるので、求める情報にアプローチしやすいことが利点です。
また、ディベロッパーのラウンジならば部屋の一部分が実物としてあるため、ディスプレイ上の情報と組み合わせて説明することでより伝わりやすくなるでしょう。
ここまで見ると店にとってもいいこと尽くしですが、サービス内容によってはマイナスに働きうることは注意しないといけません。
例えば、お客さまにコーヒー等のドリンクを無料で提供する場合、本来物件に興味がない人も暇つぶしに訪れる可能性もありえます。
もちろんそこから自社や物件を認知してもらい後々購入に繋がることはありますが、まったく購入する気のない人が毎日店舗に来るようになってしまう恐れもあるのです。
程度によっては、本来物件を見に来たお客様をそのような定期的に来る方が圧倒してしまうかもしれません。
そのような状況となってしまった場合、対応策としては、本来のお客さまの満足度は下がってしまいますが、ドリンクを有料にすること、アンケート記入を求めることなどが挙げられます。
3.マンション内の防犯掲示板
マンション内の掲示板では、地域のイベント告知やごみ出しや喫煙マナーなどに関する呼びかけ、自治・管理組合からの連絡事項などを告知していて情報共有の重要なツールとなっています。
しかし、そのスペースには限りがありますし、日々更新されていく伝達事項を紙で貼っていく手間も負担となっているでしょう。
管理組合の人々にとっては、限られたスペースにおいて住人の方々に分かりやすく情報を伝達することも求められます。
紙媒体の場合には、「マンション管理会社の案内」「管理組合の案内」「その他」などのカテゴリー分けや、新しい掲示物に「NEWマーク」をつけることなどで対応されているかもしれません。
また、マンションという多くの世帯が集まる性質から、犯罪が起きないかと不安に感じる方もいらっしゃると考えられます。
このような課題は、掲示板スペースと管理会社の運営室等にデジタルサイネージを設置することで解決出来ます。
上記画像は、某マンションで、左側がマンションのエントランス付近に新規取り付け・右側が従来からあった掲示板付近に設置した事例です。
情報の更新についてはPC操作ですぐに行うだけでなく、設定によってカテゴリー分けや新規表示・「NEWマーク」の代わりなどはすぐに実行できます。
スペースに限りがないため、今まで載せられなかった情報も掲載可能です。
新しく周辺のお店や施設の情報、災害時の避難場所等防災情報を表示してもいいかもしれません。
加えて、住人の方々は、告知を見ることや知りたい情報にアクセスすることも容易になります。
防犯カメラと連動させると、右側の画像のように防犯カメラの映像がディスプレイに表示されるため、犯罪対策や住人の方々の防犯意識向上に繋がります。
このように、新たな設備を取り入れると、課題に感じていたことの解消に加え、あったらより便利になるといったものまで実現できるようになるのです。
マンションだと、このような環境が整っていることが資産価値の向上にも影響するでしょう。
まとめ
インフラ設備をユーザーの不満に対するソリューションや潜在的なニーズに働きかけた付加価値の提供につなげた事例を取り上げてきましたが、いかがでしたでしょうか。
普段使っているものをより良い形で利用できることにより、ユーザーの方は以前よりも、長くその場所にとどまろう・製品使おうと考えていくでしょう。
これも、顧客や関係会社など周囲との関係性を構築するPRの一例なのです。
このことは簡単に数値化出来るものではないものの、後から振り返ると自分たちの事業にとって大きく影響を与えることになるかもしれません。
繰り返しになりますが、デジタルサイネージを活用する場合にも、「お客様はどのようなものを求めているのだろうか」と考えてみることが、新しアイデアを生み出す第一歩です。
良い影響、悪い影響があるかもしれませんが、まず新たなアクションを起こすことが、事業を人々に求められる形に変えていくきっかけとなるでしょう、
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