ひとくちにデジタルサイネージといっても、ビルの壁面から小売店の商品棚まで、屋内外を問わずその大きさや設置場所は多岐にわたります。
また、文字、画像、写真、動画など表示されている内容もさまざまです。
そして、そんな多様化するデジタルサイネージの表現のニーズに応えているのが、モニター(表示器具)です。
液晶ディスプレイやLEDビジョン、有機EL、プロジェクターなど様々なタイプのモニターがデジタルサイネージ用の機器として活用されています。
しかしながら、モニターによってどのような性能の違いがあるのでしょうか?それぞれの設置場所や用途に適したモニターはどれなのでしょうか?
今回は、モニターの種類別に、それぞれの特徴やメリット・デメリットなどをお伝えします。
液晶ディスプレイ VS LEDビジョン
デジタルサイネージとして利用されているモニターとしてポピュラーなのは液晶ディスプレイとLEDビジョンです。
まずは代表的なこちらの2つのタイプを比較しながら、モニターとしての特徴やメリット・デメリットなどをご紹介します。
●液晶ディスプレイの仕組みと特徴
テレビ、スマホ、PC、腕時計など、モニターとして最も身近であり、多方面に利用されているのが、液晶ディスプレイです。
デジタルサイネージのモニターとしても普及しています。
すっかり生活に溶け込んでいる機器ですが、どのようなシステムでつくられ、特徴があるか説明できますか?
あらためてその仕組みや特徴などを問われても答えられない方も多いと思います。
液晶ディスプレイの”液晶”とは、固体と液体の間の物質であり、 電圧に応じて液晶分子の配列が変わることで光の透過率が変化します。
液晶ディスプレイは、この液晶を偏光フィルターや、ガラス基盤、カラーフィルターなどでサンドイッチのように挟んだような構造をしています。
液晶自体は発光しないため、LEDや、CCFLという蛍光灯に似た照明をバックライトとして利用して映像を表示させます。
映像を美しくはっきりとなめらかに映し出すことができるため、デジタルサイネージとして、あらゆる場面で活用されています。
●LEDビジョンの仕組みと特徴
その高い省エネ性能から、一般的な照明器具としてすっかり定着したLED。「Light Emitting Diode」の略であり、「電気を流すと発光する電子部品」という意味があります。
LEDを利用したLEDビジョンは、光の三原色と言われる赤・緑・青のLEDで1つの画素(ピクセル)を構成しています。
液晶ディスプレイと仕組みが大きく異なる点は、ピクセル自体が発光していることです。
昼間の外の光にも負けない画面の明るさを持つことと、構造上大画面に加工しやすいことから、大型の街頭ビジョンや電光掲示板としてその姿をみることができます。
●性能の比較からみえる、メリット・デメリット
モニターの設置場所に対する適性を比較検討する上で指標になるのが、輝度、視野角といった性能の差です。
輝度・コントラスト比・視野角・視認性・モニターのサイズや形といった性能から、液晶ディスプレイとLEDビジョンのメリット・デメリットを比較してみます。
・輝度
輝度とは、画面の明るさで、「cd/㎡」という単位を使います。
数字が大きいほど画面が明るくなります。
特に屋内と屋外で必要になる値が大きく異なる輝度は、デジタルサイネージのモニター選びで重要なポイントです。
デジタルサイネージを屋内に設置する場合に必要な輝度は一般的に250~500cd/㎡(カンデラ)程度といわれています。
対して、屋外に設置する場合は700cd/㎡以上は必要といわれています。
液晶ディスプレイの輝度は、製品により差はありますが、250cd/㎡~2,500cd/㎡程度です。
LEDビジョンは800cd/㎡~8,500cd/㎡程度と液晶パネルよりはるかに明るくなっています。
輝度が高いと、遠くからでも表示された文字や映像を見やすくなります。
しかしながら、輝度は明るければ明るいほどよいというわけではありません。
例えば、家庭用テレビの輝度は、200cd/㎡程度です。
室内で高すぎる輝度のモニターを設置しても、まぶしくなってしまいます。
設置する環境の明るさに応じた輝度を選ぶ必要があります。
・コントラスト比
コントラスト比は、「白(最大輝度)」と「黒(最小輝度)」の輝度比のことです。
コントラストがはっきりしていると、画面にメリハリが生まれ、画像や動画がくっきりと映ります。
液晶ディスプレイは、バックライトで照らすあかりを遮ることで色の調整をします。
その構造上、完全な黒にはなりませんが、LEDビジョンは、ピクセル自体が発光するため、しっかりとした黒を表現できます。
・視野角
正面を0度とし、画面をある程度きちんと見える範囲を示すのが視野角です。
液晶ディスプレイは製品によりますが、見る角度によって、コントラストが弱くなったり色が薄くなったり、画面の見え方に違いが生じます。
LEDビジョンは、液晶ディスプレイと比べると広い視野角を持ちます。
・視認性
ひとつひとつのピクセルが小さく、間隔が狭いほど高精細になり、画面の見やすさや映像の美しさにつながります。
LEDビジョンと液晶ディスプレイを比較すると、液晶ディスプレイのほうが、ピクセルピッチが狭く高精細で、より近い距離での視聴に向いています。
・モニターのサイズや形
LEDビジョンは、パネルを組み合わせて構成するため、画面の形の自由度が高く、大画面化しやすい特徴があります。
また、曲面や細長い画面を構成することもできます。
一方、液晶ディスプレイは、パネルサイズが決まっています。ディスプレイを組み合わせることはできますが、つなぎ目ができてしまいます。大きさは年々拡大していますが、現時点での大きさは最大120型程度です。
以上のように、液晶ディスプレイとLEDビジョンは仕組みが異なるため、その性能も異なります。
液晶ディスプレイは駅のコンコースの柱や、店頭など、比較的、至近距離で表示できる場所に向いています。
一方、LEDビジョンは、ビルの屋上や壁面など、大画面の設置に向いています。
有機ELディスプレイ
ここ数年、「有機EL」という次世代ディスプレイが注目を集めています。
有機ELとは、「有機Electro Luminescence(エレクトロ・ルミナッセンス)」の略であり、
有機物に電圧をかけることで得られる発光を利用したディスプレイです。
基本的に、発光源の有機層と電圧をかける電極を基盤で挟むだけのシンプルな仕組みで、液晶ディスプレイのようなバックライトなどが不要です。
その最大の特徴はなんといってもその薄さ・軽さです。
厚みは5mmしかなく、液晶ディスプレイの約1/10程度です。
ガラスではなくプラスチック基板を利用しているため、軽く、画面自体を曲げることも可能です。
性能の面でも、自家発光方式であるため、黒がしっかりと表現されコントラストがはっきりとしており、高画質です。
視野角もフリーです。
現在特に小型デバイス分野での採用が進んでおり、スマートフォン分野での普及率は2020年までに50%以上になるとの見方もあります。
有機ELはデジタルサイネージとしても登場しています。
しかし、本格的に有機ELを採用するには、難しい条件が並びます。
パーフェクトにみえる有機ELディスプレイですが、超えるべき技術的なハードルはいくつも存在するのです。
値段が高い、寿命が短い、輝度が低い、大型化が難しい、水に弱いなど。
しかし、今後技術が発展すると共に、液晶ディスプレイなど、既存のモニターに取って代わる存在になることでしょう。
プロジェクター
デジタルサイネージは、モニターが必ずしも必要という訳ではありません。
映像を投影するプロジェクターも、立派なデジタルサイネージとして活用されています。
例えば東京駅には、上下するエスカレーターの壁面に単純な白いパネルが設置されており、そこに単焦点のプロジェクターを用いて広告を表示するタイプのデジタルサイネージが設置されています。
このように、液晶ディスプレイなどのモニターと異なり、シンプルな白いパネルやスクリーンを取り付けるだけでよいので、ディスプレイを設置しにくい場所などに向いています。
ロールタイプのスクリーンを利用すれば、使用しない場合はスクリーンを収納しておくことができます。
各種イベントで披露されているプロジェクションマッピングもデジタルサイネージのひとつと捉えることができるでしょう。
プロジェクターをデジタルサイネージに活用する場合には、明るさや投影距離がポイントになります。
まず最も重要なポイントは明るさです。
プロジェクターは、機械から出す光をスクリーンなどに投影するため、バックライトで照らし出す液晶ディスプレイと比較すると、明るい室内や、屋外ではどうしても見えにくくなってしまいます。
次に、投射距離について説明します。
プロジェクターは、スクリーンまでの投影距離によってスクリーンのサイズが変化します。
投影距離が遠くなるほど画面が大きくなります。
逆に距離が近いと画面が小さくなってしまいます。
最近は短焦点レンズを搭載したプロジェクターも登場し、近い距離からでも大画面を作り出すことができます。
プロジェクターを利用することで、ディスプレイ並みの、あるいはそれ以上の大画面を比較的簡単に実現できます。
また、省スペースなので設置場所の選択肢が広がるかもしれません。
番外編:タッチパネル
最後に、タッチパネルについて説明します。
タッチパネルは、スマートフォンをはじめ、銀行のATM、切符の発券機、コンビニのマルチ端末機など、わたしたちの暮らしの多様な場面で活用されています。
タッチパネルの感知の仕組みはいくつか種類があります。指やペンが触れた際の電圧の変化や静電気をセンサーで感知するものなどがあります。
タッチパネルにおいては、直感的に操作できるメリットが非常に大きくなっています。
画面上のアイコンやボタンに直接触れて入力可能なため、操作が簡単で、コンピューターに不慣れな人でも利用しやすくなっています。
また、利用者が多くの情報から必要な内容だけを取捨選択してピックアップすることができます。
まとめ
デジタルサイネージを選ぶにあたり、必要なモニターについて、比較しながらご紹介しました。
デジタルサイネージとして同じように利用されているように見えるモニターですが、それぞれ仕組みや特徴、得意分野が異なります。
デジタルサイネージの導入を検討する際は、用途に合わせてモニターの種類も考慮してみることをおすすめします。
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